毎度どうもDee-Sです。

ここ数年の間で、一部の音楽ファンから「最近、Chill系の音楽が何気に流行っているよね」なんて言葉を耳にする。これは日本でどうなのか未だに確証は無いけど、割とリリースの状況を見ている限りではアメリカのポップ・シーンでもTropicalやTrap登場以降の流れにもなりつつあるし、自分が好んで聴いているBalearic文脈でも、その兆候は顕著だ。YoutubeやSpotifyの検索でも「chill」というキーワード検索してみると、まぁワンサカ出てきますし、最近では過去の作品も発掘されてたり世界中で何かChill Out再構築の流れが来ているといっても、どうやら的外れな見解とはならなそうだ。

さて、ある程度の定義が無いと、その世界を頭で理解することが困難な日本人向けに説明するのに、じゃあ「Chill Out」って何なのよ? という話になりますよね。直訳とか使い方としては、こんな感じです。

Chill Out 【自動詞】+ 【副詞】

  1. 落ち着く
  2. 冷静になる
  3. くつろぐ

 

音楽ジャンルとしても特に「Chill Out」というのも存在せず、ゆったりとした、落ち着いた雰囲気の音楽、という括りで良いと思います。これ以上でもこれ以下でもないと個人的には解釈しています。つまりはオールジャンルなので、特定の枠に嵌めるのは、ちょっと無理があったりしますよね。

ダンスミュージック文脈で、このChill Outという言葉自体がトレンドになった時期があります。イギリスでAcid House Movement以降のRaveの時代です。非合法のパーティーで遊び狂って、半ば行き過ぎた行動を取られるレイヴァーに向けてのアンチテーゼとして注目を浴びました。日本でもお馴染みのKLF – Chill Outが90年にリリースされ、Chill Out Movementもまたアンダーグラウンドで静かな盛り上がりを見せました。しかし、その後は急速にRaveもCriminal Justice Bill(可決されAct)以降は萎み、Chill Out Movementもまた急速にその姿を消す事となりました。合法的な商業音楽とアンダーグラウンドの歩み寄りが行われ、一気にイギリスのダンスミュージック界は市場を拡大して2000年以降まで隆盛は続きました。

あれから約30年の月日が経とうとしている今、何故Chill Outが再構築されていく流れになっていったのか? これはポップもアンダーグラウンドも勃発経路が全く別なので、個人的には非常に興味深い流れだと認識しています。アメリカのポップシーンは2010年代となると、ポップなダンスミュージックは、当然EDMだといえるでしょう。しかし、この流れにアンチテーゼを発信したのが、今のティーン達。それもそのはずで、当時大型野外フェスで遊んでいる世代の平均は30代前半と、実は若者の音楽ではなかったという結果も散見されています(Google等の検索で各メディアの統計結果が探せると思いますので、興味のある方は探してみてください)。その姿を見たティーン達が、「何かクールじゃないよね?」という感じで間逆のムーヴメントを支持したのが、このムーヴメントの発端。既に日本のファンにもお馴染みのYoutubeチャンネルである「Majestic Casual」辺りが支持されて拡散していったんではないかな?なんて想像してます。そのムーヴメントをキッチリと取り込む上手さがアメリカのポップシーンらしく、少し前にEDMで名を馳せたCalvin HarrisもChill楽曲をしっかりリリースしている辺りが、アンテナ感度も高いなぁ、と感心してしまいます。

Calvin Harris ft. Frank Ocean, Migos – Slide

個人的に大好きなシンガーNIIAのこの曲は、何だかんだでCafe Del Marのコンピレーションアルバムにも選出されてヨーロッパのアンダーグラウンドからも支持されており、自分も割りと家で聴く機会も多いし、最近ではChill OutのパーティーでDJの時に使用頻度高めです。

NIIA – Body

ではアンダーグラウンドはどこからこのムーヴメントが沸いてきたんだろう?なんて考えると、Nu Disco界隈から派生したNew Ageリバイバルからの流れだったりします。Mark Barrott主宰のInternational Feelから自身が2014年にリリースした作品「Sketches From An Island」が決定打となり他のレーベルも触発されてBalearic/Chill Out再構築が現在進行形で進んでおります。

Mark Barrott – Baby Come Home

そしてこの、International FeelレーベルがNew Age的な楽曲のリリースにも舵を取り、現在も様々な良作がリリースされて個人的には定期観測レーベルとして注目しております。なかでも特に気に入っているのが、CFCF – On Vacationに収録されているコレ。もはや目の前が楽園になってしまう天国行き確定、という音の柔らかさ、高揚感が素晴らしいです。

CFCF – Lighthouse On Chatham Sound

この流れでにわかに注目されたのが環境音楽やAmbient界隈のGigi Masinなんかも昨今ではリリースも精力的に行われており、再評価の流れが進んでおります。また、日本の環境音楽、New Ageも欧米のアンダーグラウンドから再発掘され、特に2003年にこの世を去った吉村弘さんの作品が軒並み相場価格が上昇し、手に負えないレベルになってきました。自分も血眼になって探している作品も多いのですが、つい最近、Music For Nine Post Cardsが海外レーベルが再発してくれました。他の作品も素晴らしいので全部お願いしたいと強く願うばかりです。

Hiroshi Yoshimura – Green

Hiroshi Yoshimura ‎– Music For Nine Post Cards

Hiroshi Yoshimura Soundscape 1 surround

正直なところ、もう色々な人が社会で生きていくの、しんどいんじゃないかな? と思ってます。音楽の流行って、突然変異で発生することのほうが稀で、今の心境や世相を反映しますし。これは世界中のティーンから中年まで世代に関係なく起きている社会へのアンチテーゼなんじゃないかと個人的には認識しています。この社会を生きていく上で自分が自分らしく居るための答えが、このChill Outにあるのではないでしょうか。ちょっと、最近しんどいな…なんて思ったら、「そうだ、Chill Outしよう」とお気に入りの音楽を聴いて楽しむのも如何でしょう? どうも日本人の音楽の聴き方って「元気が出る曲」「盛り上がる曲」にフォーカスし過ぎてしまっていて、この辺の音楽を聴く文化が殆ど死滅しちゃってましたから、この機会に是非知ってもらえると嬉しいなぁ、なんて思います。